マルトリートメントやDVにより傷つく脳と回復へのアプローチ~小児神経科医・友田明美

録画していた『プロフェッショナル 仕事の流儀▽傷ついた親子に幸せを~小児神経科医・友田明美』を見て、初めて「マルトリートメント」という言葉を聞いた。虐待よりも広義で「不適切な養育」を指す。言葉による脅しや威嚇、無視、子どもの前での激しい夫婦げんかも含まれるそうだ。

 

❝マルトリートメントに当てはまる行為はさまざま。友田教授自身も身に覚えがあるといい、▽疲れて帰宅した際、側溝に家の鍵を落とした娘をたたいてしまった▽眠っている娘を置いて短時間職場に行ってしまった―などの事例を自著の中で紹介している。自信をつけさせようと、嫌がっているのに、人前で暗算の練習をさせたこともあるとし、子育てへの熱い思いの中にもマルトリートメントはあると説明する。❞

 

衝撃的だったのは、マルトリートメントが過剰で頻繁になると脳の委縮がみられるという部分。脳のMRI画像解析で友田氏らが世界で初めて発見したとのことである。

 

❝マルトリートメントが過度で頻繁になると、子どもの脳は苦しみから逃れるため、行為の内容に応じて形を変える。例えば、身体的マルトリートメントの体罰の場合は感情や思考をコントロールする部分の「前頭前野」、性的マルトリートメントでは視覚をつかさどる「視覚野」の特に顔を認識する部分が小さくなる。❞

 

ただし、「不適切な養育によって愛着形成がうまくいかなかった場合も、再形成は可能だ」と言う部分は重要だ。

 

❝「子どもと接することにおっかなびっくりになる必要はない」と友田教授は強調する。「子どもの脳は柔軟で、仮に傷ついたとしても適切なケアをすれば回復する可能性がある。まずはマルトリートメントをしてしまう親が自分の行動を見直すこと、親を周囲が支援することから始めてほしい」。さらに「子どもにとって欠かせないのは、親に甘える時間」とし、「手をつないだり、抱っこをしたりすることがとても大事」と訴える。❞

 

放送の中でも実際に脳のMRI診断で改善している様子が映されていた。さらに研究が進んで、よりよい支援の方法がつくられていくのを見守りつつ、学びを深めていきたい。

 

〈参照記事〉

暴言も子の脳に影響 マルトリートメントを解説 小児精神科医・友田明美さん
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-620314.html

不適切な子育てで、子どもの脳は「変形」する 福井大・小児精神科医の研究で判明
https://toyokeizai.net/articles/-/189445

 

コラム③

ことばとマインドセット;環境を変える、環境が変える